Rides Against

Rides Against(ライズ アゲインスト)─グランド・セフト・オートシリーズにおけるロールプレイングコミュニティ「RP_JP」発の、複数人によって運営される自動車総合情報サイトです。主にGTA5内に登場する架空の自動車を、現実世界の媒体に負けない熱量で、リアルにレビューしていくという活動をここで発信しています。(モデル車両のスペック及び史実との乖離に関してのご意見、ご感想は一切受けかねます。)

Vol.17 元祖高性能SUVの見据える未来 -2014 Gallivanter BallerSports Limited Edition-

ガリバンター

ボーラースポーツ LE

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欧州SUVの雄、ガリバンター

  ガリバンターと言えば、SUVのみを専門としたイギリスの自動車メーカー、そして欧州自動車界を代表する高品質で格式ある存在だと言うことは言わずもがな。特に人気のある「ボーラー」シリーズの、誰もが納得いくオン/オフロード走行性能に唯一無二のコンセプトを纏う高級SUVというカテゴリーは、登場当時はベネファクター社のダブスタ等ほんのひと握りの競合メーカーのみが踏み込める領域のものだった。

 今回紹介するのは、そのボーラーシリーズの中でも、2005年に誕生した高性能チューンナップモデル「ボーラー スポーツ」シリーズの2014年発売最新モデル、ボーラー  スポーツ LE(Limited Edition)。

  一見あまり違いの見られないエクステリアであるが、実際に見て、触れて、 乗ってわかる桁違いの性能を、少しでも感じとって頂ければ幸いである。

 


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基本的なスペック

販売期間:2014-

ボディタイプ:5ドアSUV

駆動方式:4WD

エンジン:5.0ℓ V型8気筒 スーパーチャージャー付きDOHC

最高出力:550ps

変速機:8速オートマチック

サスペンション:前・クロスリンク電子制御エアサスペンション ダブルウィッシュボーン  後・クロスリンク電子制御エアサスペンション マルチリンク

全長:4,880mm

全幅:2,020mm

全高:1,800mm

ホイールベース:2,920mm

 

高級SUVの先駆け

  まずはボーラーそのものの歴史を振り返らなければ始まらない。今でこそ自動車販売数でのトップを走るまでになった高級SUVというカテゴリーであるが、その元祖は間違いなく初代ボーラーである。

 1970年、イギリスに設立されたガリバンター社は、設立早々「ラグジュアリーカー・エステートカー・パフォーマンスカー・クロスカントリーカーの4つの車の役割を1台で可能にする車」という挑戦的すぎるコンセプトを掲げた初代ボーラーを生み出す。


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  21世紀に入り高級大衆関わらず世界中のメーカーが高級高性能SUV(いわゆるクロスオーバーSUV)を市場に送り込むまでになるが、当時はこのような車はほぼ存在していない。該当するとしたら先述したベネファクター社のダブスタか、強いていえばデクラス社のランチャー程度である。

  それが手探りでの開発であったことは大いに想像がつくものだが、ガリバンター社の初代ボーラーは自動車開発における様々な2択クイズに全て正解してきたと言えよう。極力シンプルにし剛性と整備性に特化させたシャーシに、馬力よりトルクを重視した静かなV8エンジン、オフロード走行を前提に前後車軸式サスペンションとするものの、ストロークが長く柔らかいコイルにすることにより乗り心地を良くする、という全てにおいてギリギリなバランスで組み上げられた最高の回答である。

  もし選択に間違いがあったとしたら、山道も舗装路もろくに走れず、騒々しいエンジンで後席の客人を叩き起す最悪な鉄の箱の出来上がりだったろう。

 

 その後も2代目、3代目と順調に高級SUVとしての道を歩み続ける。次第に高級車市場はセダンからSUVがメインの座を奪うようになり、大量のライバルが現れ始めるが、ボーラーは変わらぬ姿勢を貫き続け、未だにカテゴリー内での中心モデルであり続けている。

 

世界最速SUVへの挑戦

  話をこの車に戻そう。2005年に登場したボーラースポーツは、3代目のモデルをベースとし、主にオンロードでの走行性能を高めるチューニングが施されたモデルで、オプションパーツによるアップグレードではなく、ひとつの独立した車種としての扱いとなっている。

  スタンダードモデルより排気量が拡大されたV8エンジンと、新たに見直されたサスペンション、コーナリング性能のためにホイールベースの短いシャーシを別途用意するという力の入れようで、そのアグレッシブにドレスアップされた姿も相まって大好評を博した。

  本車は2代目にあたるボーラースポーツをさらにチューニング。ベースのボーラースポーツを凌駕する規模のアップグレードが施されている。

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[↑読者の多くは既に気づいていると思うが、筆者はどうやら雨男らしい。]

  まずボディである。オールアルミモノコックとなった4代目ボーラーであるが、ボーラースポーツLEは更なる補強と、ボディサイド面、ボンネット、ルーフにおける空力性能の向上を目的としたリシェイプを施している。

  エンジンは、スタンダードモデルの4.4ℓから5ℓへ拡大されたV8 DOHCに、ターボより瞬発力で軍配の上がるスーパーチャージャーを装着。そのパワーは550psにものぼり、トルクは69.3kgmを叩き出す。

  トランスミッションは標準と同じトルコン式8速オートマチック(もはや8速程度じゃ驚かなくなってしまった)だが、ボーラースポーツLEは「オート」と「ダイナミック」という走行モードをボタンひとつで切り替え可能なのである。

  アグレッシブなボーラースポーツLEの素顔を見るならダイナミックモードに設定。            550psの暴力的なパワーを電子制御の足回りがコントロールし、そこらのスポーツカーにも真正面から太刀打ちできるという…何とも楽しみではないか…!

  

実際に乗ってみた

  ようやく実走である。まずはエクステリアから。

  当たり前だがかなりデカい。全幅は2,020mmで、全体的に大型化している昨今の自動車界から見ても2mの大台を超える車はやはりとても大きい。重厚感ありありのフロントフェイスも相まって大迫力だ。f:id:LsCarLife:20181204005457j:image

[↑ボディサイズを聞き、「はて、現行ボーラーは1,980mmくらいじゃ?」と思ったがなるほど、かなり大きなオーバーフェンダーが前後とも標準で装着されている。]

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[↑灯火類は当然LED。先代の角目から一変、シャープな目元を手に入れ歴代シリーズダントツに厳つい顔つきになった。]

    乗る前に驚いたのがボディ各所に散りばめられたカーボンパーツの存在である。

  まずは前後エアロ、サイドスカート下部。これはまぁよく見る。しかしフロントグリル全体と、ボディサイドに配置された大型のエアアウトレット、全てのウインドウをぐるりと取り囲むカーボン製のピラー…これらには度肝を抜かれた。

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  もはや高級車において一般的なパーツとなりつつあるカーボンであるが、ここまでダイナミックにボディ全体に使用する例は、スポーツカーだとしてもあまり見受けられないものである。

  ボーラーはSUVにおいてかなり早い段階でオールアルミモノコックボディを採用したが、それに加えてここまでのカーボンパーツの使用なら、このボディサイズでも同系列のスポーティSUVと同等かそれ以下の車重だと思われる。

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[↑ボーラースポーツLE専用に用意された22インチアルミホイール。漆黒のスポークの間からかなり大経のブレーキが覗いている。フロントブレーキは脅威の16pot!]

 

  エンジンをかける。

 

  のっけから絶好調なエンジンはV8の咆哮を遠慮なく響かせる。OHVとは違うDOHC特有のサウンドは、品があるものの確実に危ない性能を秘めた心臓が鼻先に乗っかっているという感覚が車体全体を覆っているようだ。f:id:LsCarLife:20181204011819j:image

  まずは舗装路をオートモードで走る。

  筆者は3代目、現行の4代目ボーラー、ベースの2代目ボーラースポーツに乗った経験があるが、その全てに言えることは、「こんなにも重く腰高なはずの車なのに、それを感じさせないコーナリングフィール」であるという事だ。電子制御式のサスペンションはコイルではなくエアサスペンション。その都度コンピュータがキャラクターをコントロールし、常に全輪が最適な状態を保つことができるのである。

  だがこのボーラースポーツLEはその中でも抜きん出ていて、オートモードによる街乗り用サスペンションキャラクターの制御もあって、まるでFRの4ドアショーファードリブンを運転しているような気にさえさせてくれる。

  ボーラーシリーズ全般に言える事は、いい意味でのルーズというか、極限まで引き締め切らないドライビングフィールを持つという事。少々ふわつきがちな足回りはラグジュアリーな乗り心地を提案し、生まれるゆとりは悪路での走破性に対し最もシンプルに働きかけるメソッドである。

  強大な力を持つ者がちょっとした動作を行うことのいかに容易いことか。必要十分なパワーだけを、ひけらかさず謙虚に携えてスムーズに路面をなぞる様は正に紳士のそれである。後席の客人はこの車が反重力による浮遊ではなくタイヤで走っている事が信じられないのではないだろうか。

  だがしかし、アクセルを踏み込み、アグレッシブなハンドリングを仕掛ければ、その紳士めいた足回りはリアルタイムでみるみるうちにスパルタンに引き締まっていくのを感じる。

   ロングクルーズ、街乗り、スポーツ走行を手広くカバーできてしまうオートモードは、まさにガリバンターのドライブアシスト研究の集大成ではないだろうか。  

  さて、お待ちかねのダイナミックモードである。

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  ボタンひとつで切り替え完了(まったく、すごい時代だ)。停車中はどこが変わったかなどひとつもわからない。某タクシー映画のように車体が持ち上がって隠されたスリックタイヤが現れたり、エアロパーツが変形したりもしない。

  だが、発進すれば全てがわかる──

  明らかにオートモードとは違う、瞬発的な加速。──だが、タイヤがスキールしたり、車体の体幹がブレた感覚は無い。ドライバーも車体も、真っ直ぐ前を向いている。エアサスペンションも後方につんのめる車体を感知し、水平に保たれるようにコントロールしている。

  ボーラースポーツLEは全身が電子制御されたいわばサイボーグモンスターのような物で、ダイナミックモードだとそれが更に顕著になる。リアルタイムで各輪のトラクションをコントロールし、最良のパワー配分を瞬時に反映させる。

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  ダイナミックモードでの0-100km/hがわずか4.7秒、最高速度はリミッター付きで260km/hだとの発表だが、それが決して誇張されていない事は確実である。

  事実、各メーカーのテストランのメッカであるニュルブルクリンク北コースによる発売直前のタイムアタックで8分14秒という記録を叩き出した。オセロット社のリンクスが8分10秒だというから、その驚異的なパフォーマンスがどれ程のものかわかるだろう。f:id:LsCarLife:20181204021714j:image

  8速のオートマチックトランスミッションもまた秀逸な出来で、従来のものより変速にかかる時間が50%短縮されているという。手元のパドルシフトによるシフト操作も可能で、その瞬間的に完結される変速に驚かされる。いち早く神経をシフト操作からハンドリングに集中させることが出来るという点で、安全な運転にとってもひとつの大きなメリットなのだ。

  

  SUVなのに舗装路ばかり走るために生まれたの?

  まさか。
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  すっかり雨も上がったので予定通りオフロードに繰り出す。オフロードでこそダイナミックモードの真価が発揮されるのである。 
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  用意されたコースは間伐業者御用達、パレト・ベイ南の登りの未舗装路。土成分が多く、多くの車両が行き来するため深い轍が目立つ。

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  低く見える(実際低いのだけれど)車高であるが、走っているとそんな風には感じない。足回りも前後とも独立懸架でしかもエアサスペンション。

  ──そうか。オフロードを走っているとコンピューターが感知して、まるでエアサスペンションが前後とも車軸式であるかのように動いているんだ!右輪が持ち上がれば左輪を下に押し付けてトラクションを稼ぐ。独立懸架サスペンション車でオフロードを走った時特有のあのパワーがきちんと路面に伝わってない感覚が一切無いのである。

  なんだろう、「怖い」とすら思ってしまった。f:id:LsCarLife:20181204024519j:image

 

総評

  さて、昨今の高級SUVブームに疑問を感じている読者は多いのではないだろうか?(筆者もその1人である)

  このサイトでも何度か書いたが、高級SUVブームにはきちんと理由がある。高品質で、よく走り、車内が広く乗員も荷物もたくさん乗り、車高が高く見通しがきき、場合によっては悪路も走れる。こう考えてみると、むしろ高級セダンが勝っている点が無いとすら言えてしまう。また、ミニバンよりも多くがスタイリッシュで高級感があるのも大きいだろう。

  ただ、SUVが高級車市場からセダンの分のパイを全て奪いきる時代はまだしばらくは来ないのでは無いかというのがカージャーナリスト及び自動車業界内での認識であるという。ユーザー間での「高級車=セダン」という認識は未だ根強く、車格やビジュアル面でのキャラクターは替えのきかないモノであるため、デザインの変遷によりセダンとSUVの垣根が無くなる、あるいはユーザー側がそもそもカテゴリーに対する興味を失う世界になればまた話は別だろうが(そんな世界はディストピア以外の何物でもないが)。

  その高性能ぶりはセダンはおろかスポーツカーにすら危機感を感じさせる程で、それにより受けた刺激はブランドを活性化させ、よりよいクルマ造りへの礎となろうとも言える。

  言わばクロスオーバーSUVは「全方位型高級車」としての地位を確固たるものにしたのであるが、その中心は70年代からすでにその前提で作られたボーラーシリーズであることに異論はないだろう。オン/オフロード走行性能と走りとラグジュアリー感を高い次元でまとめ上げた稀代の傑作を実に半世紀近く作り続けるガリバンター社に最大限の敬意を表したい。

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